「メタバース空間」

昨今話題を呼び、頻繁に議論されていることから、読者諸君も一度はこの言葉を耳にしたことがあるだろう。

インターネット元年のWeb1.0、SNSが普及しコミュニティが作られるようになったWeb2.0時代に続くWeb3.0時代として、メタバース空間での世界の幕開け待ったなしとして、話題を呼んでいる。

そもそもメタバースとは一体なんであるか。wikipediaにて以下の様に定義されている。

コンピュータコンピュータネットワークの中に構築された、3次元の仮想空間やそのサービスを指す[1]。将来インターネット環境が到達するであろうコンセプトで、利用者はオンライン上に構築された3DCGの仮想空間に世界中から思い思いのアバターと呼ばれる自分の分身で参加し、相互にコミュニケートしながら買い物やサービス内での商品の制作・販売といった経済活動を行なったり、そこをもう一つの「現実」として新たな生活を送ったりすることが想定されている[2]

https://ja.wikipedia.org/wiki/メタバース

細田守監督による映画、『サマーウォーズ』の世界で表現された仮想空間OZの様な世界観がそこでは展開される。ユーザーが思うがままにアバターを作り、もう一つの生活を営む。リアルな空間に加えてもう一つの次元が拡張され、より没入感を持ったネット空間が展開されていくのである。

このメタバース空間をビジネスチャンスと捉え、様々な企業が参入を始め、大きな話題を呼んでいる。

メタバース空間の昨今

顕著な例で言うと、誰もが知るファッションーブランド、バレンシアガが挙げられる。昨年9月にはメタバース空間でファッションショーを行い、ビデオゲーム「フォートナイト」とのコラボも発表された。

ゲームの中で着用できるコスチューム(:通称スキン)にロゴ付きのウェアを影響することで大きな売り上げを得ている。

新しく作られたこの空間において、全く新しいジェンダー観が生成されるのか?それとも相変わらず現実世界の中での身体的な記号はつきまとうのか?

メタバース空間におけるジェンダー観の行き着く先について現時点で、この様な予測が立てられている。メタバース空間の特徴、身体と衣服の特徴について視野に入れながら、迫り来るWeb3.0時代のジェンダー観について考察していきたい。

メタバース空間とジェンダー

メタバース空間において、ジェンダーに関わる諸問題が快方に向かうことが示唆されている。と言うのも、ヴァーチャル空間において実際に、ジェンダーの垣根を超えた試みが行われているからだ。その一例として約五年前ほどから話題を集め、今ではYoutuberの中での一大ジャンルにまで上り詰めたVTuber、それらを取り巻く環境が挙げられる。Vtuberとは、Virtual Youtuberの略で、アニメーションを用いたキャラクターに、声、モーションを加えることでモーションキャプチャーを用いて動きを、加えて声も加えることによってアニメのキャラ自身が動いているかの様に見せるといったものである。

2017年から活動を始め、2022年6月現在登録者17万人を誇る「ねこます」は、成人男性にの声によって演じられ、狐の少女の姿をしたVTuberである。

彼はあるインタビューの中で、性別を超える試みについてこう答えている。

VRでのコミュニケーションが発達していくと生物学的に男だということは形骸化していって、概念としての性別、そもそも現実の性別がどうだからとこだわる意味がなくなってきちゃって、コミュニケーションしやすいところに集約される。

『Vanitas』No.7

ここから読み取れるのは、ヴァーチャル空間における身体の自由性だ。生殖活動を行い、子孫を残していくことで時代を繋いでいかないといけない現実世界において、どうしても「男性」「女性」の枠組みは取り払うことが難しい。しかし、ヴァーチャル空間において、生殖活動を実行することは最早できない。つまり、生物学的に「男性」であるか、「女性」であるのかは問題でないのである。この「生物的な性別」にとらわれない自由性が、メタバース空間における自己表現の自由性を助長している。

また、ヴァーチャル空間において自己に内在する憧れ、理想を反映する傾向も見られる。生まれつき譲り受けた身体的特徴に縛られる必要がないため、理想の体型、理想の顔、スタイルを手に入れることができる。こうした、「理想を反映する」傾向は、コロナ禍で話題となった『あつまれどうぶつの森』や『フォートナイト』をはじめとして、アバターを作成し、ネット空間の中でコミュニティを形作っていくゲームにおいて見られている。

こう考えると、生まれつきの遺伝子に依拠する部分が多い私たちの体とともに生きていかないといけない私たちの現実世界が不公正にすら見えてくる。この様な、ヴァーチャル空間が持つアイデンティティの解放性をうまく助長すれば、私たちのジェンダーに対する姿勢をもっと寛容で、多様なものにしていけるのではなかろうか。こう筆者は考えるわけである。

次回の記事では、メタバースの社会におけるファッション、そしてその中に内在するジェンダーの可能性について書いていきたいと思う。

というのも、ファッションとは、現実世界において自分の理想の姿を実現するための手段であり、理想を反映し、思うがままの姿で暮らすことのできるメタバース空間と通じる点が大いにあるからだ。

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1件のコメント

  1. メタバース空間におけるジェンダー観と行った点では、VRchatとかも事例として一般例になるかなと思ったりしますね。

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