メタバース・ファッションを広めることで、より自由な自己表現が実現できる世の中を作っていきたいと考える筆者が、メタバースとの出会い、メタバースの未来についてありのままの気持ちを綴る。
メタバースとの出会い
僕がメタバースという言葉に出会ったのは2021年、大学3年生の頃だった。ビデオゲームやオンラインゲームなどの類とはほぼ無縁の少年時代を送ってきた僕にとって、当時バズワード的に波及したメタバースという言葉、概念は少々とっつきにくい、縁のない遠い世界線の話に見えていた。そんな中実際メタバースと触れ合うことになるきっかけは、私の通っていた大学の大学昇格100周年を記念としたビジネス・プロジェクトだった。看板にデカデカと書かれた、「資金100万円をサポート」の文字。簡単に言ってしまえばそのスケールの大きさ、葬りの良さに胸をくすぐられたのだ。現金な男である。今となれば、100万円などビジネスを起こす上での本の初期投資にしかなり得ないと分かるのだが、ビジネスのビの文字も知り得なかった僕にとって、100万という数字は、心躍らせ、一歩踏み出させるのに十分な金額だった。
そのビジネスプロジェクトの概要は、5-6人で構成されたチームでビジネスプランを練り、それを資金の100万円内でやりくりして、半年以内にある程度形にしてね、といった類のものだった。僕の所属したチームは、メタバース空間で大学のキャンパスを再現し、大学案内をするというプランをたて、半年間それに打ち込んだ。
実際、プロジェクト自体はお世辞にも成功したと言えない。キャンパスの再現は当初予定していたものと比べ大幅に簡易化されたものに終わり、オーガニックに集客できた客数はほんの微々たるものだったと思う。ビジネスとして利益を生み出すことは愚か、大学の広報として多少貢献できたか、できなかったか、その程度の代物だった。それでも、僕の胸は高鳴っていた。規模は縮小に終わったとしても、メタバース空間に人を呼び寄せ、そこで大学紹介を行ったり、イベントを行ったりすることは、とてもロマンにあふれたことだった。もう一つの新しい世界へのドア、その先にある無限の可能性を見せてくれた、このプロジェクトに参加したことは、立派な成功体験だったと思う。

大学院での研究
その後少し期間が空いて、メタバースを本格的に取り扱うことになるのは、大学院入学後のことである。ここで初めて、僕は質感を伴って、実感を持って、本腰を入れてメタバースについて考えることになる。メディア学のコースの中で、僕は自分の関心領域だった「自己表現という文脈でのファッション」と「メタバース」を結びつけて考えていくことになる。
修士論文は、social VRの中での自己呈示についてfurryというサブカルチャー・グループに注目しながら分析した。細かい研究内容や結果についてはまた別の記事で詳細に書こうと思うけども、これを機によりバーチャルの中でのファッション、メタバースという世界にのめり込んでいくこととなる。
また大学院在学中に、ご縁があってインターン生としてメタバース内での事業を展開する、dolami, incで働き始めることとなる。この会社はavatownという、VRChatなどsocial VRの中で使用できるアバターを売買できるプラットフォームを運営している。

これについてもまた詳しく書きたいが、志を共にする仲間と共に、アバター・ファッションをより盛り上げていくことが僕の今の夢だと言える。この幸せな環境に感謝しながら、今は目の前の一歩一歩を確実に歩んでいくことだと自分に言い聞かしながら邁進する日々を送っている。
メタバース・ファッションの何にワクワクするのか?
まず第一に、生身の身体に縛られないという利点がある。これはメタバースの世界について語る際の常套句ではあるが、つまり、自分のイメージした身体、肉体を思うがままに纏うことができ、その自分の作り上げた理想の肉体で、新たに人間関係を築いていけるのである。
この特徴は、特に生まれ持った性別や自分のジェンダーに悩みを抱える利用者にとってとてもありがたい救いとなりうる。現実社会の中では装うのに勇気がいる服(たとえば生物学的に男性のひとにとってのスカートなど)が、メタバース空間では気軽に纏えてしまう。誰もスクリーンの裏にどんな人がいるのか、気にしないから。僕も初めは、アバターの後ろにある人間を想像しがちだったけども、メタバース内での文化に馴染んでいくうちに、徐々にそういった癖は抜けて行くものだと思う。韓流アイドルグループの誰が整形してるかなんて、もう誰もそんな話しないでしょ?
メタバースのクリエーターたちによる、肉体再現の試み、またその発展は日進月歩。止まることを知らない。より滑らかに、より自然に動くディテールを再現しようと、試行錯誤の歴史が日々蓄積されていく。このような過程を見ているのは、何か急速に発展を遂げる今日のアジアの国々を思わせて、非常に活気と勢いを感じる。
例えばこのポスト。筋肉の収縮と膨張をより精密に表現する試みをシェアしていて、多くの人がそれに熱狂している。
ただ、メタバースでの表現は単に人間の肉体を再現する試みのみにとどまらない。メタバースならではの身体表現も、日々可能性の広がりを見せ続けている。
例えば、体からビームを出す、体や身につける衣服そのものが発光する未来が来たらどうだろうか。一度は妄想した、遠い近未来を描いたSF映画。そんな世界線がゴーグルの先のメタバース空間に待っている。
こういったクリエーション、クリエイターをサポートしようとする土台があることも、メタバースコミュニティのまた素晴らしいところである。僕は今までアバターメディア運営の一環として様々なクリエイター、インフルエンサーにインタビューしてきたが、皆口を揃えて、ここにはクリエイターをサポートする土台がある、もしくは自分自身がサポートしたいんだということをかたった。メタバース空間での身体表現を、みんな足並み揃えて盛り上げていこう、という気概が見られる。
今後、メタバースでのファッションはどうなって行くのか?
メタバースファッションは今後、どうなっていくのだろうか。
現実世界のファッションブランド、それラグジュアリーブランドが次々参入しているのだからそれは大したものだ。中でもgucciは精力的にメタバースファッションに参入している。
今後、メタバースファッションの市場規模が広がっていくのは間違いないと言えるだろう。そんな、メタバースのさらなる発展を見守りつつ、メタバース・ファッションの魅力について発信していけるよう、日々歩みを進めていきたい。