SOSHI OTSUKIは日本人デザイナー大月壮士が手がけるメンズウェアブランドで、2015年AWシーズンからコレクションを開始する。ブランド哲学は「日本人の精神性によって作るダンディズムの提案」である。鹿鳴館時代や第二次世界大戦時など日本史上の特定の時代を切り取ったコレクションを発表してきた。
かねてから私がこのブランドに対して持っていた印象は、
「日本らしさ、日本が受け継いできた美の形を服を通して表現するブランド」だった。しかしながら、それはあまりにも浅はかな思い上がりだったことを思い知らされる。彼の創作は「和」を再現することではないのだ。あくまでも彼の表現する世界観を表現するベースとなる土台が和のディテールだということに留まっている。(参照:https://www.fashion-headline.com/article/9612)彼のアイデアを形にするそのプロセスは、実は日本人が過程を振り返ることで納得し得るのではないかと考える。彼自身の表現するところはあくまで日本人の精神性であって、「和」を表面的に使うことではない。アシンメトリーを用いた日本人の思惑と同じである。日本人としての文化、自然観に根ざして芸術活動を行なった結果、一つの特定の芸術形態が作り上げられた。大月壮士が行うクリエイションもまた、彼が思う「日本人の精神」を表現した結果、日本人としての芸術表現に収まったのではないか。私はこう解釈するのだ。
Kimono breasted shirts
彼のクリエイションの中で毎シーズンの定番のガーメントがある。Kimono breasted shirtsと名付けられた、着物のディテールを「シャツ」の枠組みに収めたガーメントだ。
通常のシャツと違って、ボタン位置が斜めに走っているだけでなく右側にある紐をボタンホールに通して縛ることによってより、着物らしい重ね合わせが表現できるようになっている。
襟の部分も、中心で揃わず、幾何学図形のようだ。
このシャツの持つ様々なディテールにアシンメトリーの表現が見られるkimono breasted shirtsと銘打たれているだけあり、着物のエッセンスがシャツの中でしっかりと表現されている。私はこのガーメントの秀逸だと思う点は、「着物」という、現在日本人の間ですら一般的でなくなってしまった、ある種恐れ多いものをリアルクローズに落とし込んでいる点であると思う。洋服らしさを残しつつ日本の美意識を表現していることによって私たちは日本人らしい美意識を日常の中で纏い、表現することができる。彼のような、日本人としての精神性を携えたデザイナーが作るコレクション、リアルクローズこそが、私たち日本人が育んできた美意識を受け継ぐのではないかと考える。
参考文献:
三井秀樹、『美のジャポニスム』、1999年、文春新書
深井晃子、『ジャポニスム・イン・ファッション』、1994年、平凡社