パリにて新時代の幕開けを告げるコレクションが9月27日から10月5日にわたり開催された。
今シーズンを象徴するトレンドの一つとして挙げられるのが「個性」とりわけ「女性性」解放の動きである。今回の記事ではこちらに焦点を当てて解説、考察を行なっていく。
今シーズンのコレクションでは、世の中に蔓延っている様々な「記号の呪縛」から逃れ、人々が「個別」の「個性」を重視し、表現しようという流れが広く見られた。そのための手段として多くのブランドで見られたのが、過去に作り上げられた特定の記号への再考である。その再解釈の対象となることで一躍トレンドに躍り出たスタイルとして
・Y2K
・コルセットやトレーンなど伝統的なイブニングドレスに見られるディテール
・ミニスカートが一世を風靡した60年代ファッション
などが挙げられる。
今回はそのうちの第一回目、Y2kファッションにフォーカスを絞る。
1.Y2Kファッション
Y2Kファッションは今季のトレンドの中でも最も注目に値するトレンドであろう。Y2Kとは、Year 2000の略称であり、2000年前後に台頭したトレンドのことを指す。主な特徴として、
・クロップド丈のトップスとローライズシルエットのボトムスで作る、ウエスト周りを際立たせたスタイル
・メタリックなジャケット
・主に色鮮やかなピンクを使ったカラフルな色使い
・デニムオンデニム
・バタフライドレスなどが主に挙げられる。
「DOLCE&GABBANA」や「MSGM」をはじめとするブランドはこのトレンドを大々的に取り入れた。単に当時のコピー品を作るのではなく、ブランドのなりに再解釈を行い、それぞれのブランドらしい表現を行なったという点が特筆すべき点である。
・ダブルデニム+ブラトップ+下着見せ(DOLCE&GABBANA):
Y2Kファッションの特徴の一つであるデニム×デニムの上下にここ2シーズンですっかり定着したブラトップをミックス。
着こなしとして、パンツの位置を下げることによって腰回りがスッキリ見える、まさにY2Kムードを汲んだスタイリング。ロゴが処された下着を覗かせることでブランドらしいグラマラスな雰囲気を演出。
1’なぜ2000年台のトレンドが現在にリバイバルしたのか
2000年、21世紀という迫り来る新しい時代に人々は心躍らせ、派手で楽観的なフ文化に傾倒した。2021年という時代に重ね合わせると、コロナ禍に見舞われ、思うような生活が営めないこの時代は決して当時のように心踊るものとは言えないことから、ある意味不思議な現象であるとも言える。
しかしながら、少しずつ取り戻しつつある「普通」の生活に心躍らせる昨今の世の中の現状にフォーカスする限りでは、「楽しかったあの時代をもう一度」というある種のノスタルジアを孕んだ感情から生まれたものだと考えることもできないだろうか。負の感情からの振れ幅こそが、より楽観的で、強いメッセージ性に繋がったというわけだ。